結い相続支援センター

相続コラム

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お悩み対策事例2:高齢者アパートオーナーの資産管理

相談者:長男64歳 (父87歳、長女60歳)

– 状況 –
アパートを複数持っている父と、その子である長男、長女の2名のご家族です。父は自分でアパートの管理を行っていますが、先日も外出先で急に倒れ数日間入院する等、体調も悪くなってきました。無事退院しましたが、物忘れがひどくなっており、認知症を危惧しています。今後、認知症の程度が進むと、アパートに入居希望者が出た場合や退去者がでた場合の契約手続き等のアパート賃貸管理や修繕、また、相続の問題を心配しています。

– 何もしなかった場合 –
認知症等、父の判断能力が喪失した場合には、アパートの賃貸管理や売却処分、大規模修繕、建替え等による維持・管理ができなくなる。
父の相続発生後、相続税申告期限内(相続開始後10か月以内)に法定相続人の間で、誰が何を相続するか遺産分割協議をまとめる必要がある。(遺言書を作っていない場合)

– 成年後見制度を使った場合 –
ご本人に資産があるため、親族が成年後見人になれず、司法書士、弁護士等の専門家が成年後見人になる可能性が高い。
ご本人にとって合理的な理由のある支出しか認められず、家族にとってメリットのある行為、例えば、将来の相続税対策として他のアパートの建替えによる資産圧縮を図ることなどができない。
父の相続発生後、相続税申告期限内(相続開始後10か月以内)に法定相続人の間で、誰が何を相続するか遺産分割協議をまとめる必要がある。(遺言書を作っていない場合)

– 家族信託を使った場合 –

所有者である父を委託者、長男を受託者、そして利益(家賃)を受け取る権利は父とするため、受益者は父とし、アパートを信託財産とする信託契約を締結する。
委託者と受益者が父であり、名義だけを受託者である長男とする信託契約としているため、不動産取得税、贈与税や譲渡所得税等は発生しない。
父が元気なうちは、父と長男が一緒にアパートの管理を勉強し、将来、父が判断能力が喪失した場合には、受託者である長男が財産管理処分権限をもっているため、入退去時の賃貸借契約のほか、大規模修繕、建替え、売却を行うことができる。
信託契約書の中に、将来相続が起こった場合に、どの物件を誰が相続するのか残余財産の帰属先を定めておくことができるため、定めておけば、別途遺言を作成したり、相続発生後に遺産分割協議をしなくても、信託契約書で定めたとおりに財産を相続させることが可能となる。