結い相続支援センター

相続コラム

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お悩み対策事例4:相続後の共有トラブル回避

相談者:長女58歳 (母84歳、長男60歳)

– 状況 –
母には長男と長女がおり、夫は10年以上前に他界しています。
長女は数年前に離婚し実家に戻ってからは、母と同居し献身的に母を支えています。長男は他県にマイホームを購入し家族と住んでいます。母には自宅兼アパート(以下、「不動産」といいます。)以外資産はほとんどありません。
不動産は長女に相続させたいと考えておりますが、長男長女それぞれに孫もおり、どうすればよいか思案しています。

– 何もしなかった場合 –
認知症等、母の判断能力が喪失した場合には、不動産の賃貸管理や売却処分、大規模修繕、建替え等の維持・管理ができなくなる。
母の相続が発生すると、不動産が長男と長女の共有となってしまう。
共有になると、不動産の修繕や将来の売却時に共有者全員の承諾が必要となり、反対者がいる場合や共有者が判断能力を喪失している場合には、手続きを進めることができなくなる。また、共有者に相続が発生すると更に孫の世代まで権利が分散して意思統一が更に難しくなる。
共有を避けるためには、長男の法定相続分相当額(長女に不動産を相続させる旨の遺言を作成した場合には、遺留分相当額)の代償金を別途用意し、長女が長男に支払いをする必要がある。

– 成年後見制度を使った場合 –
母に資産があるため、親族が成年後見人になれず、司法書士、弁護士等の専門家が成年後見人になる可能性が高い。
母にとって合理的な理由のある支出しか認められず、家族にとってメリットのある行為、例えば、将来の相続税対策として他のアパートの建替えによる資産圧縮を図ることなどができない。

– 家族信託を使った場合 –

所有者である母を委託者、長女を受託者、そして利益(家賃)を受け取る権利として受益者は母にし、不動産を信託財産とする信託契約を締結する。
委託者と受益者が母であり、名義だけを受託者である長女とする信託契約のため、不動産取得税、贈与税や譲渡所得税等は発生しない。
将来母が判断能力が喪失したり他界した場合でも、受託者である長女が単独で不動産経営を行うことができ、必要に応じて修繕、建替えや売却も行うことができる。
信託契約書の中で、母の相続発生時には受益権(信託財産から発生する利益を得る権利)の2分の1を長女が、2分の1を長男が承継すると定めておけば、長女と長男は母の遺産の半分ずつを相続したことと同じになる。その結果、賃料収入や売却代金等の半分ずつをそれぞれ受け取ることができる。
遺留分対策として家族信託を使う場合には、長女が受け取る受益権を4分の3、長男が受け取る権利を4分の1とすることで、長男が長女に対して遺留分減殺請求をする余地がなくなる。